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今月のコラムです2007年9月のコラム

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「サイナスリフトって??」です。

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こんにちは、岸川です

先週、歯科医療従事者とは、全く関係の無い、ある意味只の素人さんから、歯科相談を受けました。
内容は、“先生、私の前歯(真ん中の2本の両横の歯)がへっこんでいるのは、どう治療したら一番よいと考えますか?”“奥歯のかぶせは、数年前、他院でフルベイク(歯肉の際まで白くしたセラミックのかぶせ)にして貰ったけど、どう思われますか?”に始まり、“インプラントって1回法と2回法があって、上の奥歯は、サイナスリフトしないといけないでしょ”に到るまで、ハイレベルな専門用語・知識の連発に、私はエラク感心してしまいました。

ということで、今月のコラムは、ハイレベルな知識欲を持たれている方々の為に“サイナスリフトって??”です。歯医者相手でもかなりアドバンスコースなので、ちょっと、難しすぎると言われるかもしれませんが、いきますね。

まずサイナスリフトっていうのは、サイナス=上顎洞=上アゴの奥のほうにある空洞、リフト=挙上なので、上アゴの骨が薄い時に、インプラントを固定できるように、シュナイダー膜(上顎洞内の粘膜)を剥離挙上しその薄い骨との間に造骨材を入れる作業です。

まず、症例です。
写真A1は今日先程オペした患者さん(63歳女性)のものです。76部サイナスリフト・同時764インプラント埋入のケースです。これは、シュナイダー膜(上顎洞粘膜)の状態もよく、骨厚が1〜2ミリしかないですが、皮質骨の状態も良かったため、30〜40分のオペ時間で終了致しました。術後が、写真A2です。条件さえそろえば、オペの精度・スピードはこんな感じです。


A1症例写真

A2症例写真

条件とは、シュナイダー膜にも個人差がありまして、すぐ破れるものと、そうでないものがあります。骨が折れやすい人とそうでない人がいる様に、普段の食生活が大きく関係していると思います。また、あとに出てきますが、上顎洞内の隔壁の有無も重要条件です

サイナスリフトに関しましては、第一人者であるスティーブン・ウォレスが2006年アメリカ歯周病学会年次総会での講演の中で、1996年のコンセンサスレポート(日本の歯医者のインプラントのホームページは、この10年以上も前のレポートを元に作られたものが殆どです。)以降の世界中の論文データをまとめ、6000症例以上の側壁開創式サイナスリフト症例に関しての統計を発表しております。その中で、術中のシュナイダー膜の穿孔(偶発的に破れる)率は、スタディーグループにより差異がありますが、14%〜56%の範囲、機能後(かぶせ物を装着した後)の1年以上のインプラント生存率は92%という数字をスティーブン・ウォレスは提示しております。

岸川歯科で、前述の欧米のデータより遥かに良い数字が出るのは、側壁開創量一つをとっても、欧米では、うずら卵大程開けるのが、日常茶飯事なようですが、当院では鍵穴程度です。オペの繊細さの違いが、そのまま、数字に現れていると思います。

また、シュナイダ−膜穿孔時のフォローアップも年々、改良されて来てはおりますが、側壁開創式サイナスリフトがらみでインプラントを10本植えてかぶせ物を装着できたとしても、そのうち1本は1年以内に植え直す必要がある現実は全世界共通ですし、かぶせ物を装着できるまでにもこぎつけないものも加えると、世界平均で“側壁開創式サイナスリフトがらみでインプラントを10本植えると2本弱は1年以内に再トライが必要”というのが現実なようです。そうして苦労して得られた増骨部の骨への転換率も平均15%というデータで、分類ではタイプ4(スカスカの骨です)で、元々の皮質骨(表面部2〜3ミリの硬い骨)の状態が予後を大きく左右するのが現実のようです。
色々とリスクはありますが、それらをクリアして得られた歯の恩恵は計り知れないのは周知の事実ですから、上あごの骨が薄いにもかかわらずインプラントを希望されてる方は、サイナスリフトのオペは次の日必ずといってよいほど腫れますが、是非受けて頂きたいと思います。ご理解、ご協力の程宜しくお願い致します。

以下3例は先月、日本歯科先端技術研究所大阪での症例発表の中で用いたものです。
すべて隔壁の有る(上顎洞の中が、壁で何室かに別れている)症例で手間のかかったものばかりです。

まず1例目です。
写真B1は看護士をされている58歳女性のもので、隔壁の存在により前後2室あるパターンです。
矢印が隔壁で、上顎洞内を斜めに走っております。その為、2箇所の開創口が必要で、写真B2aは2005,5,25,7654サイナスリフト・インプラント埋入直後のものです、向かって左上に白い不透過像(造骨部)が2箇所確認できると思います。B2bは2007,4,3反対側67サイナスリフト・インプラント埋入直後のものです、こちらは1室でした。7654はすでにかぶせが入ってよく噛めております。67も来週にはかぶせが入ります。お愉しみに。


B2a症例写真


B2b症例写真

今月は、キャパの関係で1例目だけ提示しました。2例目以降は来月にしたいと思います。
今月も、難症例たくさんお待ちしております。

ではまた来月。

 

岸川歯科 院長 岸川 裕

 


 

 

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