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今月のコラムです2012年2月のコラム

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「ガイドサージェリーって??」です。

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こんにちは、岸川です。

今月のお題は
”ガイドサージェリーって??”です。

ガイドサージェリー(GuidedSurgery)とは、CTとインプラントシュミレーションソフトを駆使して、パソコン上でインプラントの埋入位置を3次元的に決定し、そのデータを基にサージカルガイド(写真A9)を作製し、そのサージカルガイドを用いてインプラント手術することをいいます。ですから、サージカルガイドとはカーナビや旅行でのガイドさん、ゴルフのキャディーさんのようなものをいいます。 経験の浅いドクターでも無切開手術や即時負荷インプラントがしやすくなると云われています。

色々なIT関連会社からガイドサージェリーのシステムが開発発売されていますが、唯一、歯科インプラントメーカーが手掛けたのがノーベルバイオケア社のノーベルガイドです。
同社はブローネマルクインプラントシステムという2回法インプラント(術部の切開を2回しないといけない)のパイオニアで、現在では多くの後発メーカーがこの古典的なシステムの弱点(ネジの緩み、折れ、表面性状等)を克服し、優れたインプラントを世に送り出しておりますが、40年以上の歴史と実績を武器に、依然世界一のインプラント販売シェアを維持しております。

2005年当初、インプラントのスペシャリストから経験の浅い歯医者にいたるまで誰もが安全・正確に無切開手術と即時負荷インプラントが出来る様にという目論見で開発発売されたノーベルバイオケア社のノーベルガイドでしたが、色々と不評で、高いお金を払ってシステムを購入しても診療室の片隅で埃をかぶったままという歯医者さんも多かったようです。

2011年大幅改良発売されたノーベルガイドのソフト・ノーベルクリニシャンは出来が良いということでしたので、骨量、神経の走行や噛み合わせの条件がシビアなケースで手術が少しでも安全かつスピーディーに出来ればという思いと、果してどれ程有能なものか?見極めてみようと思い昨年末導入してみました。

以下症例です。2例とも昨年末より準備し、今年の仕事始め1月6日にガイドを用いてオペしたものです。

■1例目 ○本○○さん 6○歳男性

A1、A2、A3は初診時の口腔内、左上と下顎の歯茎が痩せ細っているのが確認出来ます。
A4はそれまで使用していた下顎の入れ歯です。全部の歯が無くなって5〜6年になるそうです。
「インプラント義歯を入れたい」主訴で来院されました。

初診時のレントゲンはA5aです。CTと照合して骨の厚さ、神経の走行を書き入れたのがA5bです。上顎は骨の厚みは赤線で示したとおり特に左側は骨量少なめで全体に骨密度も疎です。下顎は神経の走行(黄色線)がかなり前方まで来ています。前方の黄色線部分は神経が通ってないことが多いですが、万が一通っていた場合はインプラントすると確実に下唇麻痺が生じてしまいます。

このケースでは患者さんと相談の上、上顎は総インプラント、下顎は黄色線部分を避けた前方に入れ歯の固定元としてインプラントを埋入することに致しました。
A6、A7、A8のように骨のある部分と補綴物の噛み合わせを考えながらパソコン上で3次元的にインプラント埋入位置をシュミレーションし、そのデータをスウェーデンのノーベルバイオケア社に送信すると現地の機械がA9のサージカルガイドを自動作成し1週間ほどで診療所へ送られてきます。送られてきたガイドを当院の熟練技工士が余分なばりを取り除き調整を施しながら口腔内の模型にハマる様にし、予め仮歯も作成します。

そのガイドを用いてオペするとA10のようにパソコン上でのシュミレーションどおり、骨量のある場所や神経を避けた場所で補綴物の噛み合わせも考慮された位置に正確かつスピーディーにインプラントすることが出来ます。
このケースでは上顎の骨量が全体的に少なく骨質も疎であり、インプラントの初期固定を得る為上顎洞底と鼻腔底の皮質骨を利用致しました。最終補綴物はボーンアンカードブリッジタイプ(2010.11コラム掲載)で予定しております。





 

■2例目 ○○○○美さん 6○歳女性

B1、B2、B3、B4は初診時、B1のレントゲンで右下に黒く写る大きな病巣が確認出来ます。B2では右上の銀歯が下の歯茎に当たってえぐれているのが、B4では左下の2本の前歯が上の歯茎に左上の1本の虫食い歯が下の歯茎に当たってえぐれているのが確認出来ます。
「10年前から虫歯や歯が無いところが沢山あり歯医者に行くのが恥ずかしく我慢していた」「正月には歯を入れたい」「インプラントにも興味がある」等主訴でインターネットを見て来院されました。息子さんが治療費を支払われるということで下顎をインプラント上顎は総入れ歯で対応することになりました。

B5はノーベルクリニシャンでのシュミレーション、インプラント埋入位置をシンメトリーになるよう心掛けました。B6の乾燥材入りの銀袋にB7のテンプレートが入れられて届きます。









B8は抜いた歯です、どれも感染して松の実みたいな綺麗じゃない色をしています。
B9は最終補綴物が入った時見栄えが良くなるよう下顎前歯部のデコボコを骨整形してから、インプラント埋入した直後のレントゲン。B10は骨量も骨密度も良好であったのでその日のうちに仮歯まで入れたところです。最終補綴物はスーパー・ストラクチャータイプ(2010.11コラム掲載)で予定しております。





以上2例から、ガイドサージェリーは手間とお金は多少かかりますがインプラント治療をより安全で正確にサポートし、予知性・安全性を更に向上させる画期的な方法だと思いました。
もちろん、あくまでも補助としてのサージカルガイド使用で、術中もCTを撮影し神経までの距離や上顎洞までの距離を確認することは必須です。

 

PS・・・NHKの1月の放送で、インプラント治療で被害を受けた患者が増加していることが取りざたされていたそうで、当院の患者さんも多くの方々が視聴されていたようで、診療室でも色々と話が出ておりました。

「昨日NHKでインプラントの失敗のをやってたの視ました。私のインプラントは御蔭さんで20年もってるから、岸川先生上手いことしてくれはったんやわと思って視てました。」「NHKのテレビで斜めにインプラントが入ってえらいことになってました、今こうしてレントゲン見ると私のはどれも真っすぐ入ってるから安心しました、ずっと信頼してますよ。」といった類の意見感想ばかりでホッと致しました、中でもインプラントオペ当日に「先日NHK視てインプラントするのが怖くなりました、このまま歯が無いままでいきます。」という患者さんに、「そんなんに踊らされてどうするの、NHKが食べられるようにしてくれるわけでもないし。」隣のチェアーでその会話を聞いていた別の患者さん(17年前に当院でインプラントして定期メインテナンスに来られていた)が帰り際「岸川先生にまかしといたら大丈夫よ!」ってネガティブ思考に陥っていた患者さんをいっぺんにポジティブに翻意させた場面には、嬉しくなりました。

事実、世間では現在インプラント関係の事故は多発しています。医療行為にはリスクがつきまといますが、医療事故を起こさないことが一番重要です。インプラント治療は骨に穴を開けたりする口腔外科の内容や、歯茎の清掃状態や形態などを管理する歯周治療の内容や、噛み合わせや見た目をつくる補綴の内容など多くの専門的な知識と技術を要求されます。これらが総合的に行われている歯医者でなければ、きちんとした治療はできません。

今月も、歯が不自由でなんとかしようと考えている方たくさんお待ちしております。
では、また来月

 

 

岸川歯科 院長 岸川 裕

 


 

 

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