こんにちは、岸川です。
今月のお題は「最近のインプラントって??2012年」です。
前半2例は前歯部のGBR(骨増生)インプラント症例。
後半2例は無歯顎抜歯即時荷重インプラント症例です、無歯顎即時荷重インプラントの中でも抜歯同時なのでより難易度が高い症例。
いずれもCTやコンピューターガイドシステムやオリジナルの骨造成器具を駆使して切開剥離縫合等を基本に忠実に丁寧に施術したものです。
今月の写真はちょっと・・なので気を付けて見て下さい。
■1例目 ○○○○郎さん 2○歳男性
写真A1は術前の骨、写真A2は3D画像、右上1,2欠損部唇側の骨が大きく欠損しているのが確認出来ます。
写真A3はH24,3,22右上2欠損部にまずインプラント埋入し、自分の骨と人工骨をミックスしたものを足りない骨の部分に載せたところ。
写真A4はミックスして載せたものが動かないように、チタンメッシュを被せインプラントをアンカーにビスで固定したところ。
写真A5・A6は3ヶ月後H24,6,22チタンメッシュを撤去したところ、幼弱な骨様組織が出来ているのが確認出来ます。後は骨に置換する3ヶ月程後に右上1部にインプラント埋入し完成です。
■2例目 ○○○子さん 5○歳女性
写真B1は初診時レントゲン。全顎的に歯周病が進行しており歯槽骨が溶けて無くなっているのが確認出来ます。
写真B2・B4・B5はH24,2,8自家骨と人工骨をミックスしチタンメッシュを右上3部に写真B3のサージカルガイドを用いて3次元的に適切な位置に埋入したインプラントで固定し外形付与したところ。写真B6はH24,5,22チタンメッシュを撤去したところ、幼弱な骨様組織が出来ているのが確認出来ます。
写真B7はH24,8,29右上2部インプラント埋入時です。来月には綺麗に歯が入ります。
P.S.・・・1例目は10年以上も前からある方法で診断能力と治療技量が勝負の分かれ目、インプラントの位置付けもドリリングも経験と勘が必要、歯周組織の取扱いが甘く途中でチタンメッシュが露出するようなことがあると逆に骨が減ってしまうこともある。
2例目はサージカルガイドを用いたので位置付けは簡単だが同じく歯周組織の取扱いが甘く途中でチタンメッシュが露出するようなことがあるとロスが生じる。
以前はオトガイ(下顎の骨)からブロック骨を取って来てビス止めしていたが低侵襲で経年ロスも少ないのは今回のこの方法。
チタンメッシュの固定も以前は4隅をビス止めしていたが、今はオリジナルの1箇所止め。
骨セメントがもっと改良されて付形維持が容易にできるようになれば将来的にチタンメッシュも要らなくなる。
ここ10年再生医療で注目されてきた幹細胞云々や今回ノーベル賞のiPS細胞云々は自家骨移植同様、移植後経年ロスが大きくなることが予想される。
現在最も低侵襲で経年ロスが少なく安価なのは上記症例の方法。
■3例目 ○○○子さん 5○歳女性
写真C1・C2・C3は初診時、C2の状態で来院、下顎4321123457が御覧のように保存不可能です。ラジオグラフィックガイド・サージカルガイドを作成しそれを元に3次元的にバランスのとれた仮歯を準備してオペに臨みました。(写真C4・C5・C6)
H24,7,31下顎4321123457抜歯・同時に6本インプラント埋入し固定の仮歯を装着しました。(写真C7・C8・C9)
最終補綴物は6ヵ月後ジルコニアセラミック予定です。このケースはノーベルバイオケア社のノーベルガイドとノーベルスピーディーインプラントを用いました。
仮歯でも御覧の様に綺麗ですしよく噛めるそうです。
1回目型取り、2回目レントゲン撮影、3回目抜歯・インプラント・仮歯ですから3回の来院でほぼ完成です。
■4例目 ○○○男さん 7○歳男性
写真D1・D2はH24,7,23初診時、上下顎とも長いブリッジで補綴されていますが、歯周病が進行し全てグラグラで保存不可能です。インプラント相談で鳳診療所より来院されました。安くて一番ベターな方法でということでしたので、上顎はH24,7,30右上753左上357抜歯同時に8本インプラント埋入し一旦取り外しの仮の入れ歯を装着致しました。
下顎は患者さんと相談の結果、多少費用がかかってもインプラントした日から固定の歯を是非にということでしたので、写真D3の2部構成のラジオグラフィックガイドをダブルスキャンし埋入シュミレーションを経てサージカルガイドをスウェーデンに発注し、それを元に3次元的にバランスのとれた仮歯を予め準備してオペに臨みました。(写真D4)
お盆を挟み準備にも時間がかかりましたがH24,9,13下顎5432157抜歯(写真D5・D6)・同日6本インプラント埋入し固定の仮歯を装着しました。(写真D7・D8)
仮歯でも御覧の様に綺麗ですしよく噛めるそうです。患者さん完成をお急ぎなので最終補綴物は2ヵ月後セラミック予定です。
P.S. ・・・日本臨床口腔外科医会が10月第2週に大阪であり、1人目の演者元京都大学講師の坪井先生が「どこのメーカーのインプラントシステムを使っているかを今だに売り文句にしている歯医者がいるが、肝心なのは術者の診断能力と治療技量」っておっしゃっていた。 全く同感!
2人目の演者元奈良県立医科大学准教授の堀内先生が、最近やたらと流行っている無歯顎インプラントのAll-on-4(オールオンフォーコンセプト:14本歯が無い総入れ歯の方に4本のインプラントを埋入して固定性の歯を入れる)に関して「医療はスレスレを競うものではない、無歯顎上顎インプラントは最低6本のインプラントが必要で8本が標準、下顎は最低5本で6本が標準」っておっしゃっていた。 全く同感!
当院の様にPRGFをインプラント表面に添加して骨結合率90%超にしても10年インプラント残存率100%ではないし、最近流行の光機能化で骨結合率90%超にしても残存率100%ではない。4本(オールオンフォーコンセプト)はインプラントメーカーN社やずぼらな歯医者のセールストークには丁度いいかもしれないけれど、1本抜けて3本になると補綴が全てボツになるので、All-on-4をされた患者さんは早い時期に再治療を強いられることになるのは火を見るよりも明らか。現在無歯顎インプラントで安心・安全なのは上記症例の様に下顎6本・上顎8本です。
今月も、難症例たくさんお待ちしております。
では、また来月。
岸川歯科 院長 岸川 裕 |