こんにちは、岸川です。
今月のお題は“長〜くかかる症例って?その2”です。
写真1AはH20.12.8初診時のレントゲン写真。
上顎の両奥のフォークみたいなインプラントが特徴的です。
この時点でお気付きの方は中々の記憶力。(いないと思いますが。)
2009年(H21年)4月のコラム“骨の再生・PRGFって??”の2例目に登場し、同月内には終わると書かれていた症例です。それが先月までかかりようやく終了致しました。
(上両奥のブレードインプラント撤去・PRGF・同部インプラント埋入迄は前記述済みなので省略致します。)
写真1Bは前歯の治療に取りかかる前、H21.1.26の口腔内写真です。
一見普通に見えますが、左上奥は噛むと揺れ、前歯は歯茎との間に物がつまるということでインプラント治療を希望して来院されました。また、初診2年前に交通事故に遭われ腰を痛めその後遺症で毎晩コの字になって寝ており週に何度か京都まで針治療を受けに行っているとのことでした。そのため、治療台を倒す毎に痛みが走り仰向けになるのもままならず、一回の治療は一時間以内に終わるように、またうがいもあまりして頂かなくてもよいように治療を進めていきました。
当初は1Aのレントゲン上で骨が溶けて黒く写り明らかに抜けている両奥のフォーク状のインプラントと右上3.4のインプラントを撤去・再埋入し、他の細長〜いインプラントはそのまま使う予定にしておりました。・・・が、H21.5.12右上5から左上5のブリッジを除去すると、その細長いインプラントはどれもクルクル廻り(骨とひっついていない)そのまま使うのを断念、患者さんの希望もあり上顎は新しく総インプラントで対応することに致しました。
同日右上3.4左上3の細長いインプラント3本撤去同日同部インプラント3本埋入、左上4抜歯、同部は穴が大きかった(写真2A)ので同日インプラント埋入はせずPRGF(写真2B)して積極的に造骨することに致しました。
骨が出来るのを待ってH21.8.27同部インプラント埋入。わずか3ヶ月で密度の高い骨がバッチリ出来ているのが確認できると思います(写真2C)。
写真3Aは同日の術後レントゲンです。
上顎に8本の新しいインプラントが植わっており、右上2.1左上1の3本の細長いインプラントと右上5左上2.5の3本の歯で上顎の仮歯をもたせている状態です。
あとは、細長いインプラント3本と3本の歯を抜去して新しいインプラントに仮歯をもたせた状態で2〜3ヶ月歯茎の治癒を待って最終のかぶせを入れたら完了。
・・・の、予定でしたが“医療費控除を有効に活用したい”という御希望が出ましたので、じっくり治癒を待って翌H22年度に完了するように予定をずらしました。
ということで、H21.11.16右上2.1左上1の3本の細長いインプラントと右上5左上2.5の3本の歯を抜去、翌H22.1.13右下5から左下6のブリッジ撤去。写真4Aは右上5抜歯時現れた20年前のアパタイト顆粒の顆粒のままの塊です、当然これも綺麗に掃除致しました。
(ちなみに現在、口腔内の造骨に使用する材料で厚労省が認可しているのは、このいつまで経っても骨に代わることの無いアパタイトの顆粒だけです。)
H22.3.15上顎型取りに始まりH22.4.1には上下顎補綴物装着、微調整と経過観察を経て先週H22.9.21終了。
写真5A、5Bは装着したジルコニアオールセラミックの歯。
写真5C、5D、5Eは補綴物装着時。
綺麗に入っていると思いますが、いかがでしょうか?
この患者さんの場合、体調とスケジュールのため長くかかりましたが、PRGFとCTを完備した当院では通常6ヵ月程度で終了まで導けると思います。
PS. 今年のウィンブルドンテニス大会 スペインのナダル選手は故障から復帰し見事世界NO1プレーヤーになりましたが、慢性化した両膝の治療にPRGFを使用したことが主治医のDrサンチェスから報告されました。サッカーのロナウド、ゴルフのタイガーウッズも同Drの治療を受けており、スポーツ医学ではPRGFによる再生医学がますます注目されています。日本の歯科の再生医療では、採血・分離注出といった行為の煩雑さに抵抗があるのか、一握りの歯医者でしか普及していないのが現実です。
もっともっとPRGFやCTが普及すれば、日本の歯科インプラントの精度・予後は格段に向上することと思います。
今月も、難症例や徹底的に治したい方たくさんお待ちしております。
では、また来月。
岸川歯科 院長 岸川 裕
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